

『SPICY CURRY 魯珈(ろか)』とハウス食品とのコラボレーションには、数あるメニューの中からチキンカレーが選ばれた。「うちの看板メニューです。当店のカレー全般にいえることなのですが、スパイス感をとても大事にしています。チキンカレーの場合は、食べていただくとまずクローブの香りが鼻に抜け、次にカルダモン、シナモンが後に続くという構成。そのかぐわしい香りを楽しんでほしいですね。そして鶏肉はもも肉を使用。プリッとした食感と旨みを大事に、煮込み時間を調整しています。」と、シェフでありオーナーの齋藤絵理さん。幼い頃から大のカレー好きで、学生時代の趣味はカレーの食べ歩きという筋金入り。忙しい現在も時間を捻出してはインドをはじめ各地の名店をチェック、研究に余念がない。





そんな齋藤さんのカレーをレトルトカレーとして製品化するのはたやすいことではなかった。担当したハウス食品 開発研究所の八木芹菜が苦労を語る。
「スパイスは量を入れれば香ることは香ります。けれど入れ過ぎると苦味が強くなる。ベストな配合比を見つけるまでの道のりは、本当に試行錯誤の連続でした。」
問題はそれだけではない。『SPICY CURRY 魯珈(ろか)』のカレーは野菜をたっぷりと使うこともコンセプトの1つ。チキンカレーの場合、トマトと玉ねぎがその要だ。齋藤さんは語る。
「玉ねぎは甘みの強いものを選んで、味にコクを出しています。またトマトはフルーティなものを選ぶことで、カレーにさわやかさを加えているんです。」
そこをどう表現するか?しかし玉ねぎの甘み、そしてトマトのフレッシュ感は、製品化に欠かせない加圧加熱殺菌によって失われやすい。八木は大いに悩んだという。
「そのため、原料の選定・組み合わせをひたすらに考えました。玉ねぎに関しては玉ねぎのソテー加減をどのくらいにするのか。そしてどの程度の量を入れればいいのか。トマトのフレッシュ感を活かすためには、煮込み時間をどのくらいにすればいいか。幾度となく試作を繰り返しました。」
齋藤さんは今回の製品開発の話が持ち上がる前から、レトルトカレーも好んでよく食べていた。「近年のレトルトってすごくおいしい。カレー好きの間でもレベルの高さはよく知られているし、ファンも多いですよね。だからこそうちのレトルト版が出るならば、負けないものにしないと。気は抜けないな、と強く思っていました。」
試作品の第1号、齋藤さんの感想は「全然違う」に尽きたという。そこから“共闘”が始まった。スパイスの使い方から齋藤さんも提案、お互いのコミュニケーションがどんどん密になっていく。
「クミンやマスタードシードをホールで使用することで、華やかな香り立ちや食感が楽しめることを目指しました。」
様々な工夫を積み重ねたと、八木は振り返る。
3か月のやりとりを経て最終的にできあがったものを口にしたとき、思わず「ここまでのものができるなんて!」と齋藤さんはつぶやいたそう。それがこの『芳醇(ほうじゅん)チキンカレー』なのである。



『SPICY CURRY 魯珈(ろか)』は東京・大久保駅のそばにある。
「界隈にはインドやネパールのショップがあって、フレッシュなスパイスがすぐ手に入るんです。本当に便利なところに出店しました(笑)」と齋藤さん。自身のカレーイズムについて教えてもらった。
「スパイス、つまり香りを一番大事に考えています。アロマを楽しむカレーを作りたいんですね。かつ野菜はたっぷりと。そして基本的に小麦粉は使いません。水も極力使わず、ほぼ野菜の水分だけ。」
こうすることで胃に優しく、口当たりも軽くなる。満足度は高いのに、食べ終えて「お腹がスッキリしているような」カレーが目指すところなのだそう。チキンやラムといった定番メニューのほか、週替わりのカレーを創作し続ける齋藤さん。その新しい味わいを食べ逃したくないと、ファンが今日も行列をなし続けている。




『芳醇(ほうじゅん)チキンカレー』をさらに深く楽しむためのアレンジを2つ、齋藤さんが教えてくれた。
「より辛い味がお好みの方はブラックペッパーを足してください。辛さと香りがさらに際立ち、刺激的な味わいになります。」
そして辛さが苦手な方、またお子さま向けには 「1パックに対して小さじ1ほどのヨーグルトを加えて、混ぜてください。」
こうするとマイルドになりつつ、味わいも広がるという。半量に分けて片方はブラックペッパー、片方はヨーグルトを加え、両方の味の変化を体験するのもおすすめだ。
