シチュー/煮込むの仕組み

肉を煮込むと?

肉のたんぱく質の主なものは、

  1. 筋原繊維たんぱく質
  2. 肉基質たんぱく質
  3. 筋形質たんぱく質

で、いずれも加熱によって熱変性を起こす。

筋原繊維たんぱく質は、網状に広がった繊維の部分。加熱すると65℃くらいから収縮しはじめ70℃以上になると固くなり、80℃付近で収縮は止まる。その後も食感は固いままだが、たんぱく質の分解・結合が連鎖的に進むため風味はよくなる。

基質たんぱく質は、繊維をつないでいる結合組織で、加熱の影響を受けるのは主にこの中のコラーゲンである。コラーゲンは鎖状につながっているが、熱によって収縮する。しかし煮込み続けることにより、切れてゼラチン質になる。筋原繊維たんぱく質が固くなっても、このゼラチン質が肉全体の食感をやわらかくするわけである。

筋形質たんぱく質は、酵素などのたんぱく質で、加熱されると変性して浮いてくる。これが肉のアクである。

図:肉の細胞の側断面図

動物性たんぱく質の含有量の表(単位%)

食品 筋原繊維たんぱく質 筋形質繊維たんぱく質 肉基質繊維たんぱく質
牛肉 47〜59 約25 16〜28
豚肉 63〜66 約25 9〜12
タラ 76 21 3
イカ 77〜85 12〜20 2〜3
タコ 61 31 6

参考資料:下村道子・橋本慶子編「調理科学講座 動物性食品」(朝倉書店刊)

魚介類を煮込むと?

一般的に魚介類のたんぱく質は、大部分が筋原繊維たんぱく質のため、加熱すると固くなる。

ただ中にはタコやアワビなどは、長時間加熱すると再びやわらかくなるものもあるが、これは長時間の加熱及び有機酸の作用により、筋原繊維たんぱく質が部分的に切れてくるためである。

脂肪を煮込むと?

肉の脂肪は、結合組織の中で脂肪球の形で存在しているが、加熱されるとまず結合組織の膜が破れる。

さらに加熱が進んで脂肪の融点に達すると組織の外に流れ出る。

弱火の場合は、脂肪球のままだが、強火で対流が激しいとさらに細かい脂肪滴となり、そのまわりをたんぱく質などが囲む。

野菜を煮込むと?

野菜の壁はセルロース(繊維質)で保護されて固い。加熱しても分解しないが、物理的に壊されて(対流の激しい強火のほうがより壊されやすい)多孔質になり、ペクチンが溶出する。

また肉汁などのたんぱく質が細胞の中にしみ込む。

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