「煮込む」とは?

食品を水の中に入れて加熱する

食品の加熱方法には、焼く・揚げる・炒める・蒸すなどさまざまありますが、この中で、シチューなど「煮る」「煮込む」は、食品を水の中に入れて、その水を熱することによって(水を媒体として)中の食品を加熱する方法といえます。

ところで、「加熱のしくみ=熱の伝わり方」を科学的に整理すると、

  1. 伝導
  2. 対流
  3. 放射(輻射「ふくしゃ」)
実際の加熱調理においてはこれらが重複していることが多い。

「煮る」「煮込む」の場合は、(1)と(2)。つまり、

  • 熱が鍋を伝わって中の水を温め(伝導加熱)
  • 温められた水は上に、という移動が鍋の中でくり返される(対流加熱)

対流する水の中で加熱するから、食品の温度は90〜100℃で一定・均一

ご存じのように、水の温度は沸騰状態でも100℃以上には上がらないので、「煮る」「煮込む」という加熱は90〜100℃で続けられ(焼く・揚げるなどに比べると低温で加熱)、その結果長時間の加熱も可能になります。

したがって、「煮る」「煮込む」の場合は、沸騰後の火加減によって、加熱温度が変わることはなく、しかも水は常に対流をくり返すので、鍋の中の温度はほぼ均一になります。

ただし強火では鍋の中の対流が激しく、弱火では穏やかといった違い(対流の速度の違い)があり、このことが食品の変化に影響を与えることも少なくありません。

「水の浸透性」によって、食品の変化を促進

一般的に水は、物質の中にしみ込みやすく、逆に物質の中の成分を浸出させやすいという性質があります。食品の場合も同様で、水の中で加熱すると食品の中に水が入り込むため内部まで均一に加熱しやすく、また食品の成分は水の中に溶け出しやすくなります。さらに、いったん溶け出たものを再び内部に戻すなど成分の移行もしやすくなります。

また水の作用で起こる食品の組織の変化、「加水分解」による食品成分の分解・結合も促進されます(図参照)。

「煮込む」と「煮る」の違い

食品を水の中で加熱するという意味では「煮込む」「煮る」、さらに「ゆでる」も同じですが、食品の成分や水(汁やソース)の変化の度合いは異なります。

つまり「ゆでる」場合には、食品に火が通ればよいのに対し、「煮る」は、食品に火が通るだけでなく、水に加えた調味料が食品の中にしみ込んだ状態。

そして「煮込む」は、その上にいろいろな食品の成分を水に溶け出させて渾然一体とし、さらにはそれらを再び食品に吸収させる・・という過程のくり返し、「鍋の中の水(汁やソース)と食品との風味のバランスを最適化する」ことといえます。

図:シチュー/煮込みの仕組み

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