トランス脂肪酸とは何ですか。
- トランス脂肪酸とは、油脂を構成する脂肪酸の種類の一つです。
図1.油脂の模式図 - 油脂は、グリセリン1分子に、脂肪酸が3分子結合して構成されています。
- 脂肪酸は炭素、水素、酸素で構成されています。炭素と炭素が二つの手で結びついた二重結合(不飽和結合)を一つ以上有するものを不飽和脂肪酸、全く含まないものを飽和脂肪酸といいます。
- 不飽和脂肪酸には、シス型とトランス型があります。シス型、トランス型は二重結合の炭素に結びつく水素の向きで決まります。水素の結びつきが同じ向きになっているほうをシス型といい、互い違いになっているほうをトランス型といいます。このトランス型になった脂肪酸をトランス脂肪酸といいます。グリセリンに結合している脂肪酸の一つ以上がトランス脂肪酸である油脂をトランス脂肪といいます。
図2.脂肪酸の模式図 - トランス脂肪酸は、天然の食品中に含まれているものと、油脂の加工・精製する工程でできるものがあります。
- 天然にできるトランス脂肪酸は、牛や羊などの反芻(はんすう)動物の胃の中の微生物の働きによって作られます。そのため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が含まれています。
- 油脂の加工・精製でできるトランス脂肪酸は、液体状の油脂を半固体や固体の油脂にするための水素添加という過程で生成することがあります。部分的に水素添加された油脂は、食感作り、貯蔵性や酸化安定性などの機能に利用されてきました。
- 植物や畜水産物からとった油脂の精製工程では、好ましくない臭いを取り除くために高温で処理することにより、トランス脂肪酸ができることがあります。サラダ油などの精製した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれているものがあります。
- 平均的な日本人よりも多いトランス脂肪酸の摂取量を基にした諸外国の研究では、トランス脂肪酸の摂取により心臓病のリスクが高まることが示されています。ただし、脂質をとる量が少ない日本人の場合にも同じ影響があるのかどうかは明らかではありません。
- WHO/FAO合同専門家会議は、トランス脂肪酸の摂取量を一日の総エネルギーに対して、1%未満(約2g)とするよう目標値を設定しました(2010年)。
- 日本の食品安全委員会による健康影響評価書(2012年)では、日本人のトランス脂肪酸の一日の平均的な摂取量は0.7gであり、総エネルギーの約0.3%と推定しました。日本人の通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられるものの、脂質をとりすぎた食事をしている人は留意する必要があると指摘しています。
【参考情報】
食品安全員会
https://www.fsc.go.jp/
農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/index.html
【関連FAQ】
Q.ハウス食品はトランス脂肪酸の減少に取り組んでいますか。