トップメッセージ:
〜「CSRレポート2011」発刊にあたり〜
「CSR」って何だろう?
このCSRレポートも、今回で3回目の発刊を迎えることになりました。今回は冒頭のご挨拶に代えて、「CSRって何だろう?」ということについて、考えてみたいと思います。「何を今さら?」と思われるかも知れません。しかし、この問題は単純なようで難しく、正直なところ、社内の議論でも未だ「これだ!」という明確な結論に至っていません。今後も引き続き、社内でも議論を重ねていく必要はあるのですが、今回は、この問題に関連する幾つかの「トピック」について、取り上げてみます。

ハウス食品株式会社
代表取締役社長
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「CSR」が注目され始めた経緯は?
「CSR」という言葉は昔から馴染みがあった訳ではなく、この言葉が注目されるようになってきたのは、今世紀に入ってからではないでしょうか。では、その背景はどのようなものか、この点について考えてみます。
一つには、企業を取り巻く環境が大きく変わったということが考えられます。今世紀に入り、この美しい地球環境の存続は「当たり前ではない」という危機感が大きくなってきました。同時に、世界規模の産業化が進むに従い、その裏返しとしてさまざまな社会問題が深刻になってきています。各企業は、自らが社会と共に存続するためには、これらの問題を真摯に受けとめる(少なくとも、悪影響をおよぼさない)ことを、その「社会的責任」と考えなくてはならない、という機運です。
しかし、近年のCSR注目の背景には「環境」の変化だけではなく、企業自身にも原因がありそうです。CSRという概念のしばらく後に出現したものに「SOX法」があります。これは法律、即ち「ルール」ですが、企業に対する「戒め」という側面も持っているように感じます。一方で、CSRは企業の自主的な取り組みですので「ルール」ではありませんが、その意図する所は共通点も多くみられます。「CSR」と「SOX法」、この共通点と相違点を対比することは、私たちに何かヒントを与えてくれそうです。
「三方良し」の考え方
欧米で誕生した「CSR」は、日本企業にとっては全く新しい概念なのでしょうか? そうではないと思います。昔から近江商人に伝わる理念に「三方良し」という言葉があります。商取引ですから「売り手良し、買い手良し」の2つは当然ですが、それに「世間良し」を併せて考えるのが近江商人。この「世間」を「社会」と考えれば、「三方良し」はそのまま「CSR」につながります。さらに「三方良し」の教えは、CSRが本業の上に新しく上積みされるのではなく、本業の中に溶け込んでいるのです。勿論、近江商人だけではなく、古今の日本企業はおのおの個有の企業理念を持っていますし、その中で社会と企業のつながりを定義づけているケースは多いと思います。
「三方良し」と「CSR」をどのように対比させるか。日本と欧米の対比でもあり、過去と現在の対比でもあり、個人と組織の対比でもあるかも知れません。何れにおいても「CSRって何だろう」と考えるにあたり、「三方良し」は大きなヒントを私たちに提供してくれそうです。
「企業とは何か」
同時に欧米においても、CSRは全く新しい概念ではなさそうです。かのP.F.ドラッカー氏1946年の著書「企業とは何か」(Concept of the Corporation)を紐解いてみます。この本は今から65年前の著書にもかかわらず、現在も本屋さんに必ず並んでいることからも、時代に左右されない何かが記されている名著であることが分かります。
その中には、次のように記されています。「産業社会において、企業たるものは、@事業体として機能を果たす、A社員の信条と約束の実現に貢献する、B社会の安定と存続に寄与する、これら別々の3つの問題を、同一の原理と方策によって解決しなければならない」と。この時代に「CSR」という言葉は無かったはずですが、その意味する所を「企業は本業として取り組まなくてはならない」と、ドラッカー氏は65年前に明確に謳っているのです。
私たちの「CSRレポート」も今回3回目の発行を迎え、CSR意識を社内に醸成するステージから、次のステージ〜私たちなりのCSRを練り上げるステージ〜に入ってきました。「CSRって何だろう」という、この単純にして難解な問題に自問自答しながら、今後も一歩一歩進んでまいります。これからが本当の始まりだと思っています。
東日本大震災を経験して
2011年の3月11日、今まで経験したことがない大災害が東日本を襲いました。震災に遭われた方々には、心よりお見舞いを申し上げます。
この地震後の対応に追われる中で、私たちは「ハウス食品一社では、何の価値もお客様にお届けすることはできない」ということを痛感しました。原材料の手配、工場の稼働、製品の流通、さまざまな企業・インフラの機能が揃って初めて、即ちバリューチェーンがつながって初めて、私たちは1つの価値をお客様にご提供できるのです。しかし同時に、ハウス食品もこのバリューチェーンの鎖の輪の中の一つであり、社会の中でなくてはならない企業の一つである、という自負を強めることもできました。
私たちの企業理念は「食を通じて、家庭の幸せに役立つ」というものです。今期こそ、この社会における私たちの役割を全うし、「日本の元気」に僅かながらでも貢献することに、全力を尽くしてまいりたいと考えております。


