ハウス食品では様々なカレーの商品を扱っており、カレーのおいしさを通じてお客さまの幸せに貢献したいと日々商品開発に取り組んでおります。そんな中で、食物アレルギーがあってカレーを食べられない方に調理型カレーを提供したいと考え、まずは、食物アレルギーのある方の割合が高い、乳幼児に向けたアレルギー対応商品をお届けしたいと思ったのが開発の始まりでした。
食物アレルギーのあるお子さまがいらっしゃる方にヒアリングを実施する中で、市場にあるアレルギー対応商品は乳幼児向けのものがほとんどなので、乳幼児期以降に使用できるアレルギー対応商品がほしい、という強いニーズが確認できました。
小学校中学年・高学年くらいになってくると味覚も大人になってきます。そういった時期の方への商品が必要だなという想いを強め、また、ヒアリングの中では、「食物アレルギー対応食があるだけで嬉しい」「アレルギー対応食においしさまでは求めていない」と言われる方もおり、誰もがおいしいと感じるような商品をこういった方々にお届けしたい、と開発者魂に火が点きました。
食物アレルギーのある方においしいと感じてもらうのはもちろんのこと、食物アレルギーのない方にもおいしいと思っていただける商品を出したいと思った時に、弊社の看板ブランドのバーモントカレー、シチューミクスのブランドで展開したいと開発を始めました。
会社の看板ブランドを使った商品を作るにあたり、自信を持って世に出せるレベルの風味を目指して、500を超えるほどの試作を重ねました。特に小麦と乳製品を使わないでいかにおなじみのおいしさを表現するかにこだわりました。
①とろみを片栗粉でつけるとあんかけのようなとろみになってしまうのですが、小麦でつけたようななめらかで少し重みのあるとろみを表現するという点
②バーモントカレーは乳製品のまろやかさもおいしさの特徴なのですが、乳製品を使わないでそのまろやかさを表現するという点
以上の2点に特に力を入れています。
「小麦や乳製品を使わずにおいしさをつくる技術開発」、「原料や製造現場でのコンタミネーションを防ぐ体制確立」等に時間がかかっておりましたが、関係部署が一丸となって取り組み、構想からは約10年の歳月を経て2014年にやっとお客さまにお届けできることになりました。
気付きは多くありました。例えばパッケージデザインですが、トーンを落とし気味にし安全面や慎重さを訴求したパターン、カラフルにして見やすくしたパターンなども候補に挙がっていましたが、表面は特定原材料アイコンと文字をセットにしてわかりやすく表示し、パッと見て特定原材料7品目不使用(※2024年時点では8品目)ということがわかるものが良いという声。外箱への意識以外にも、中袋のデザインにも配慮が必要だという声。
今回の商品は、携帯しやすいように小袋に分けています。アレルギー対応食は外に持参されることも多いそうなのですが、中学生の男の子が、キャラクターの絵の描かれたパッケージを持ち歩くとなると誰かに見られると恥ずかしいな、ということも。
外箱はどういう商品かすぐわかるようにして、中袋のデザインは極力シンプルなものがよい、というのもお話の中から伺えたことですね。
一般にシチューは秋からTVCMで放映されますが、乳製品や小麦のアレルギーがあるお子さまが、「すごくおいしそう」「どんな味がするんだろう」と強い憧れを持たれているという声も伺いました。今までのシチューは乳製品の味で特徴を出してきていましたが、今回、別物の味にするのではなく、シチューミクスの味を何としてでも味わってほしい!という強い想いがすごくモチベーションになったと思っています。乳製品のように白いものを使わずにクリーム色のきれいなシチューが作れるかという点にもこだわって作りました。
学校行事やキャンプで一人だけ離れて別のものを食べるというのではなく、アレルギーを持っていない方でも十分においしいものにすればみんなで一緒に同じものが食べられる、という想いがより強くなっていきました。普段シチューミクスやバーモントカレーを食べている方にも十分満足していただける味にしないとこの商品はダメなんだ、とこだわって開発してきました。
アレルギー対応食となると、特殊な原料を調達し、検査費用もかかるため、価格が高くなってしまう傾向があります。ただ、あまり高い価格にしてしまうと、特別な商品のようになってしまい、アレルギーのない方もいっしょに食べていただきにくくなりますので、家族みんなで食べられる量と価格のバランスを取って6皿分としました。
特定原材料を工程内に持ち込まない、ということを徹底するために、特定原材料不使用シリーズ専用ラインで製造しております。
専用の入り口から、原料を入れるようにし、必ず検品して本当に間違いなく正しい原料が入っているか、外装に汚れがないか等をチェックした状態で初めてラインの中に持ち込むようにしています。
また、ラインの中の気圧を外よりも少し高い状態に確実に保つことで、空気を介した混入も起こらないように管理をしております。
器具や工具はライン内専用。専用ライン内での作業はラインの中にあるものだけで解決できるようにしています。
専用のコスチュームも用意しました。コスチュームの色も他の工場のコスチュームとは別にし、専用コスチュームのまま外に出てはいけないというルールを徹底しています。また、他のラインのコスチュームとは別にクリーニングもするなど、工場主体となって専用タスクチームを組み、リスクを極力なくす独自の製造工程を作り上げました。この商品の意義に共感しあえているからこそ、工場の方と一丸となって取り組んでこられた、と改めて感じています。
原料についても、気を配りました。おいしい原料だからどんどん取り入れようというわけにはいきませんので、原料メーカーさまで原料の製造方法を確認し、コンタミネーションリスクも考慮して中身の配合を作り上げていくというところにも力を入れました。原料となる農作物なども現地の畑の視察をおこない、保証書を受領のうえ採用するようにしています。ハウスの他の商品においても同様ですが、採用の際に基準をクリアしていても、近隣の環境を確認する意味でも定期的な視察確認もおこなっております。
この商品は、
①カレー味やシチュー味のいろんな料理にアレンジしやすく使い勝手が良い、
②家庭で通常ルウと間違えて使用してしまうことを防ぐ、という目的からも粉末タイプにしています。
カレーライスやシチュー、ハヤシライスだけでなく、ご家庭でいろんな料理にアレンジしていただき食べられるメニューのバリエーションが増えれば幸いです。
食物アレルギーのある方にはもちろん、そのご家族や友達にもいっしょに楽しんでいただける商品として、これからもより良いものにしていきたいと思っています。