世界のカレー パキスタン

世界のカレー パキスタン

インドをはさんでスリランカの対角線上にあるパキスタンは、インダス川流域に広大な平野をもち、K2を抱くカラコルム山脈に至ります。大きな国なので、山岳部、平野部、海岸部で天候も異なりますが、首都イスラマバード周辺は山に近いせいもあって年間の寒暑差が大きく、冬期には平均10℃、夏期には33℃という気温の開きがあります。また降雨量も海辺の地域に比較すると少なく、雨期の降雨量月でも100mmをわっています。しかし、インダス川の豊かな水は農作物に恵みをもたらし、小麦、トウモロコシ、米、豆、野菜、果物を多く実らせ、人々の食生活を充実させています。

パキスタンのカレー紀行

スープの多いカレーが中心

インドの西隣りのパキスタンでは、近隣国と同様に、スパイス文化に裏打ちされたカレー中心の食生活が営まれます。暑い国なのでドライタイプのカレーよりも、喉を通りやすいスープの多いカレーが中心となっています。食事は1日3回、毎食たっぷりと食べます(「腹八分目」「楽しくゆっくり食べる」という日本に似た諺もあります)。また暑さのため、食物の腐敗が早いので、作りおきするカレーよりも、手早く作ってすぐ食べることが多いようです。主食はチャパティと米の両用で、朝はチャパティと1種類のカレー、昼はチャパティとごはんと1種類のカレーというのが食生活の典型的なパターンです。

健康意識から最近は辛さは控えめ

カレーに使うスパイスの組み合わせを見ると、平均的には、クローブ、シナモン、ブラックペパー、コリアンダー、ローリエ、カルダモン、ターメリック、赤唐辛子などです。暑気に勝つために辛みをつけて汗を出し、香りよく清涼感を求めるのは他の暑い国同様。しかし、近年はあまりの辛さはかえって体に悪いという医者のアドバイスがゆき渡り、昔に比べると辛いカレーは減りつつあります。

豊富なスパイスを組み合わせたバリエーションに富んだカレー

90%以上がイスラム教徒の国なので、肉類は羊と牛をメインに食べます。魚類は肉よりもカロリーが高いとされており、体を温めるために冬に好んで食べられます。パキスタンのカレーは、材料の組み合わせによる区別だけでなく、どのスパイスを使用するかによっても種類が違ってくるので、食材の豊富な国だけにそのレシピの数は膨大です。

デシ・ヒクマという伝統医学も

スパイスによる民間療法はパキスタンでも盛んで、DESIHIKMA(デシ・ヒクマ)というインドのアーユルヴェーダに相当する伝統医学が民間に深く浸透しています。例えば、ブラックペパーを毎日2〜3粒しゃぶる、あるいは飲むと消化能力が高まるとされています。また、ローリエを粉にして水に溶かして飲むと血圧を下げる、コリアンダーを冬のスープに入れると咳を止め寒さを防ぐなど、さまざまなスパイスをベースとする文化圏だけにその使い方には長けています。食生活の中でも、古くから経験的に伝えられているスパイスの効用を取り込む形でメニューが考えられ、日々の健康が守られているのです。

パキスタンのカレー

ムルギ・カリー(チキンカレー)

たっぷりのスープで味わうダイナミックなチキンカレー。毎日の食卓に。

ムルギ・カリー(チキンカレー)

コフタ・カリー(ミートボールのカレー)

ゆでたまごをマトンの挽き肉で包んだミートボールを焼いてソースで煮込む、時間をかけて作る贅沢なカレー。お客様をもてなす日の一皿になります。コフタはマトンのミートボールという意味です。

コフタ・カリー(ミートボールのカレー)

マチリ・カリー(たらのカレー)

ヨーグルトでくさみ抜きをするのは、どこの国にも共通する知恵のようです。魚のうま味とヨーグルトのコクを味わう冬のカレーです。

マチリ・カリー(たらのカレー)

アロ・ムッタア・アンダ・カリー(じゃがいも・グリンピース・たまごのカレー)

フレッシュな青唐辛子を使ったグリーン・カレーペーストで作るチキンカレー。辛いカレー味にココナッツミルクのまろやかさが際立ちます。

※掲載情報は2020年11月時点のものです。

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