世界のカレー タイ
タイは背後に山岳地帯、前方に海、広がる平野にはチャオプラヤー(メナム)の大河を抱き、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアと国境を接して広がる国。首都バンコクを含む中央タイから南タイにかけて土地は肥沃で、米は年に何度も収穫でき、バナナ、パパイヤ、マンゴーなどのフルーツ類、野菜類も豊かに実ります。東北地方ではもち米が作られ主食となっており、独特のイサーン料理があります。全体的に見ると、食物にはとても恵まれた国です。これらの産物は、1年を暑期、雨期、寒(乾)期の3期を巡る天候が育ててきました。赤道に近い緯度に位置し平野が多く、降水量の多少を除いては、年中25℃〜30℃位を行ったりきたりの気温なので、農産物も安定して供給されます。この作物の豊かさが暮らす人の気持ちをも柔軟に穏やかにし、隣接する国々の文化を容易に取り入れる気風を生み出しました。
目次
タイのカレー紀行
お客様をもてなす時には7〜8品
タイは、基本的には1日3回の食事ですが、少量ずつを何度かに分けて食べる人も多いようです。1年中暑さの中で暮らすので、胃に負担をかけないように自然にこのような習慣が生まれたのでしょうか。お客様を招いたり、あらたまった行事の日の食卓には、春巻きやさつま揚げ(トードマンプラー)の前菜、サラダ(ヤム)、スープ(ゲーンチュウ)、カレー(ゲーン)、野菜料理、炒めもの、果物や甘い菓子が基本パターンで、7品〜8品の料理が並びます。
低カロリーで野菜をたっぷり
このようにふだんの日と特別な日の間に食べ方の違いはあっても、タイの料理に共通するのは、油をあまり使わず(サラダといってもノンオイルです)、肉や魚類と比較して野菜を大量に摂ること。それも、一種多量の野菜ではなく、一皿の中に多種を取り合わせて多量に摂る「多種多量主義」がどこの家庭でも貫かれています。こうした野菜と合わせて、豊富なフルーツ類、ライムやレモン、タマリンド(インドでもよく使われる木の実)、ココナッツミルク、 ナムプラー(魚醤油)がよく使われます。
パクチーと唐辛子は欠かせない
タイ料理といえば欠かせないのが、タイを代表する香りのスパイスであるパクチー(香菜)と辛みのスパイスである唐辛子。仏教国で宗教的禁忌もなく、豊富な食材に恵まれているとはいえ、高温多湿の気候条件の中で、無理なく食をすすめる方策として、香りと刺激を求めることはごく自然なことといえます。
クロック(石のすり鉢)ですりつぶして作るゲーンのためのカレーペースト
タイのカレー(ゲーン)は、インドのマサラのような混合スパイスを加えるということはありません。クロックと呼ばれる石のすり鉢とすりこぎで、生の唐辛子、にんにく、カー(タイのしょうが)、ホムデン(タイの小粒の赤玉ねぎ)、パクチーの根、レモングラス、カピ(シュリンプペースト・えびの塩漬けの調味料)などをていねいにすりつぶしてカレーペーストを作ります。インドのマサラ同様、カレーペーストの味は各家庭によって千差万別、タイ版「おふくろの味」は カレーペーストで育まれているといってもよいでしょう。
タイのカレー
ゲーン・マッサマン・ヌア(ビーフカレー)
焼いた赤唐辛子、ホムデン(タイの小粒の赤玉ねぎ)、レモングラス、にんにくなどいくつものスパイスで作るマッサマン・カレーペーストを使った複雑な味が魅力のビーフカレー。
ゲーン・ペ・デーン(ポークの赤カレー)
赤唐辛子を使って作るレッド・カレーペーストを使ったカレー。豚挽き肉とタケノコの取り合わせが絶妙な味わいを生みます。
ゲーン・キョワーン・カイ(チキンの緑カレー)
フレッシュな青唐辛子を使ったグリーン・カレーペーストで作るチキンカレー。辛いカレーにココナッツミルクのまろやかさが際立ちます。
※掲載情報は2020年11月時点のものです。